最近の動向
(2006.8.15 東京新聞より)
肉親の死に疑問を持つ遺族の思いに応えようと、千葉大法医学教室(岩瀬博太郎教授)は近く遺族の求めに応じ、遺体のコンピューター断層撮影(CT)による死因判定を無料で本格的に始める。
遺体が解剖されずに犯罪が見落とされている可能性もあり「警察にもっと調べてほしかったという遺族のストレスを取り除いてあげたい」と岩瀬教授。先端技術で死者の“声なき声”を聴く全国で初めての試みといい、遺体を傷つけずに死因を解明できて遺族の抵抗感を和らげられる点でも注目を集めそうだ。
変死体が発見されると通常、警察官が遺体を表面から調べる検視を実施。事件性が疑われる場合はさらに司法解剖して死因の解明が進むが、検視で「事件性なし」とされた場合、それ以上の解明は難しいのが実情だ。
検視による死因判定をめぐっては、パロマ工業製のガス湯沸かし器事故でも、北海道北見市で水死とされた男性の遺族が中毒死を疑い、捜査を求めたケースがある。
同教室は2004年1月、千葉県警と協力して20体の変死体をCTで検査。検視では頭部の内出血による病死とされたが、CTで頭を打った際にできる硬膜下出血が見つかり転倒事故死と判明するなど四体の死因が検視結果と食い違った。
今年1月からは100体以上の遺体を司法解剖前にCTで検査し、解剖結果との比較を進めている。
岩瀬教授は「CTだけで変死体の3、4割は死因が分かると思う。事件性が出てくることも考えられる」としている。
© 柳原 三佳