最近の動向
(2006.1.5 産経新聞より)

 変死体をCT(コンピューター断層撮影法)検査にかけて死因を調べる全国初の試みを、千葉市の千葉大法医学教室(岩瀬博太郎教授)が十七日にスタートさせる。司法解剖による判定が難しい症例の「解剖前診断」に活用するほか、検視にも今後応用することで、解剖に至らない変死体の死因判定にも役立つことが期待されている

 CT機器は千葉大法医学教室の研究室の敷地に設置。解剖前に変死体の全身を約2、30枚撮影し、死因判定の手がかりにする。機器の導入費用は約350万円で、維持費用は年間100万〜200万。撮影には一体当たり1万〜2万円程度かかる見込みという。

 CT検査が威力を発揮する症例の1つが、血管内に空気が入って死亡する空気塞栓症。解剖すると空気が入った部位を特定しにくくなるが、CTなら用意に判定できる。腐敗の進んだ変死体は脳などは軟化しているため解剖が難しいが、CTなら脳内出血などの確認が期待できる。通常は解剖されない部位の異常をCT検査によって発見できる可能性もある

 この他、変死体の検視、検案作業の段階でCTを活用することで「スクリーニング(ふるいわけ)」の効果が期待できる」(岩瀬教授)という。

 平成16年に千葉県内で見つかった変死体は、交通事故死を除いて約6294体(うち司法解剖は約170体)にのぼったが、スクリーニング効果により作業の効率化が見込める。

 事件性が疑われる案件の捜査ではこれまで、存命中に行ったCT検査を死後に活用するケースはあったが、費用面などがネックとなって司法解剖の際に用いられることはなかった。

 岩瀬教授は「CTの利用は解剖の精度向上にも津ながらり、司法解剖の人手が限られている現状では効率的で有益だ」と話している。

© 柳原 三佳