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■話題の新刊紹介

8月22日発売!!

遺品あなたを失った代わりに

「自署を語る」
「保険毎日書評」

東日本大震災が1年経った時点で約1万6000人にのぼる犠牲者が身元を確認されている。膨大な数の犠牲者が名前を取り戻し、家族のもとへ帰ることができたという事実の裏側には、さまざまな立場の歯科医師たちによる献身的な身元確認作業があった。
遺体安置所での苦闘、津波によるカルテ流出の混乱、いまなお続けられている照合作業、そして身元究明システムの問題点……歯科医師たちの生々しい証言によって明かされる「3・11 身元究明」を記録したノンフィクション。
プロローグ
・第1章
遺体の「歯」が語るもの
歯科法医学者・斉藤久子の証言
・第2章 
凍りついた口を開いて
岩手県警察歯科委員・菊月圭吾、熊谷哲也の証言
・第3章 
泥まみれのカルテ
釜石市 ささき歯科医院 
院長・佐々木憲一郎の証言
・第4章 
名前を取り戻した遺体
岩手県警察歯科委員・狩野敦史の証言
・第5章 
”原発下”という戦場で
福島県歯科医師会・工藤祐光、千葉県警察歯科医師会・大森基夫の証言
・第6章 
遠く離れた場所で闘うものたち
・第7章 
「使命」と「責任」の原点
エピローグ
取材を終えて
遺品 あなたを失った代わりに
遺品あなたを失った代わりに
■「話題の新刊紹介!」
今回の本では、巻子(まきこ)さんという交通事故被害者とそのご主人の体験を通して、弱者を苦しめるこの国のさまざまな制度に対する問題提起もしたつもりです。 そして何より、深い、深い、夫婦の愛情に、私自身取材しながら感動し、そして勇気をいただきました……。 ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思っています。 どうぞよろしくお願いいたします。

■新聞紹介記事

(10月22日・北日本新聞)


●『巻子の言霊』の書評コーナー

●読者様からの感想メッセージをいただいております。こちらからご覧ください。

巻子の言霊


●『巻子の言霊』の書評コーナー

特選ノンフィクション<「週刊現代」9月4日号>

逆境と闘う夫婦愛に感動

ひとりの女性が交通事故に遭い、全身麻痺となった。 動くのは目と瞼だけ。 夫は懸命に看病した。機械を使ってかろうじて言葉を伝えられるようになった。 柳原三佳「巻子の言霊」は、この夫妻についてのノンフィクションである。 夫、松尾幸郎さんの献身的な介護や、妻の巻子さんとの愛情あふれるエピソード に、何度も落涙しそうになった。 しかしそれ以上にこみ上げる怒りを抑えられない。
まず、自動車保険会社の、人の命を値切るようなやり口だ。なんと彼らは、巻子さ んにつけられた人工呼吸器等を「過剰」だと主張したという。 すぐ死ねということか。
この国の医療制度にも腹が立つ。 巻子さんはいくつもの病院をたらいまわしにされた。 交通事故死者はかつてと比べると減った。しかしゼロになったわけではない。 自動車が走る凶器であることには変わりない。 誰もが被害者に、そして加害者になりうる。 自動車社会の足元の脆弱さにおののく。

(評者・永江朗)

 ■新刊紹介■<保険毎日新聞 2010.8.11>

『巻子の言霊 〜愛と命を紡いだ、ある夫婦の物語』 (柳原三佳著 講談社刊)  

一人の少年の居眠り運転がもたらした一瞬の事故。それが、長年連れ添ってきた夫 婦の運命を変えた。

2006年7月1日、午後8時10分ごろ、富山市の呉羽丘陵の切通しを貫く片側一 車線の直線道路で、自宅に向かう松尾巻子さんの車にセンターラインをオーバーした 少年の対向車が衝突した。 被害者の巻子さんは、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、上位頚髄損傷、下位脳幹損 傷、環軸椎亜脱臼、両下腿多発骨折、下顎骨骨折を負った。一命は取り留めたものの 意識不明となり、医師からは植物状態を覚悟してほしいと言われるほどの重症だっ た。

『巻子の言霊』は、この事故を追いかけたノンフィクション作家の柳原三佳氏のルポ ルタージュだ。

巻子さんは15日間の意識不明から奇跡的に回復する。しかし、その先に待ってい たのは、全身まひ、動くのは唯一「まぶた」だけという現実だった。自発呼吸すらで きず気管挿管と横隔膜ペースメーカーが埋め込まれた。さらに、食事ができないため に腹部に穴を開ける「胃ろう」により直接胃に栄養剤を送り込む。
その後、献身的な介護を行う夫の幸郎さんは、巻子さんと「まぶた」の動きだけで 会話をすることを考える。イエスならまばたきを2回、ノーなら目を閉じる。
やがて 「レッツ・チャット」という会話補助機を使い、「まぶた」のイエス・ノーで一文字 ずつ巻子さんの言いたいことが分かるようになる。
しかし、そこで 綴られた言葉 は、「まきこをころしてください」だった。

本書は、高度な医療を担える受け入れ病院がなく、転院せざるを得ない医療難民の 問題、交通事故裁判や任意保険対人無制限の問題点なども指摘している。
著者は「一瞬の事故によって、いったいどれだけ多くの人たちの人生が狂わされ、 その裏側にどれほどの苦悩が埋もれていることだろう」と問いかける。
この本には、人の生死にかかわることの多い保険業界人にこそ知ってもらいたい真 実が隠されている。

<本書の主な内容>
第1章   終の住処
第2章   運命の日
第3章   奇跡
第4章   命の値段
第5章   紡がれる言霊
第6章   夫婦の歴史
第7章   「赦し」とは
第8章   遺言
終章    桜

© 柳原 三佳