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− ドイツ −
一方、「ドイツでも交通事故の調書を開示しているらしい」という話を聞いた私は、99年9月、フランクフルト警察とハンブルグ警察の2ヶ所で取材を行った。
フランクフルト警察、ハンブルグ警察では、いずれも実際に起こった事故の調書や統計資料などを見せながら、とても丁寧に説明をしてくれた。ロス市警で行ったような「パトカーに同乗しての現場取材」は前例がないという理由で実現しなかったが、調書に添付されている写真類の複写撮影なども簡単に許可され、調書も必要な部分はすべてコピーを取ってくれた。
ここでもアメリカ取材のときと同じような質問を警察官に投げかけてみたのだが、やはり彼らも、日本で調書類を開示していないことについては一様に首をかしげていた。「ドイツの場合は日本と逆で、刑事処分が決まるまでは調書を公開し、決まった後は非公開となります。刑事処分が決まる前に調書を開示しなければ何の意味もないでしょう?」確かに、言われてみればその通りだ。
ドイツでは、事故の調書類は弁護士を通せば無料で手に入れることができる。アメリカと異なるのは、コピーではなく、原本そのものを渡していることだ。調書を受け取った弁護士は、添付写真も含め、必要なページを自由にコピーすることができるという。
調書の作成は完全に分業化されている。事故現場では、実況見分にあたる警察官が必要事項を調べ、署へ持ち帰った書類は別の職員の手によって清書される。主要交差点や高速道路のジャンクション、事故多発地点などは、あらかじめ現場見取り図用に白地図が用意されており、日本のように警察官がフリーハンドで地図を書く必要はほとんどない。ちなみに、ハンブルグ警察の場合は、調書を作成するセクションに、16人の女性が働いていた
実況見分調書の実物を見て、最初に驚いたのは、事故直後の実況見分調書に現場を上空から写した航空写真が添付されていたことだ。 その事故は、一般道で起こった多重衝突事故。空撮はすべての事故でおこなっているわけではないが、重大事故の場合は、こうしてすぐに現場へ「ヘリ」を飛ばし、写真を撮ることによって証拠保全をするのだという。
フランクフルトの交通警察官は、次のように語った。「交通事故の中には、複雑で、非常に判断の難しいものもあります。そのような場合、私たち警察官は検事局を通して、専門家、つまり交通事故の鑑定人を現場に呼ぶことができます。そして、彼らと一緒に証拠保全をし、その場で民事の損害までも確定してしまうのです。このような協力体制がシステム化されていることは、とてもよいことだと思いますね。交通事故の処理には、科学的な専門知識が必要な場合が多いので、私たち警察官としても、専門家の協力を得ることができ、本当に助かっています。」