「歩車分離式信号」の指針が23年ぶりに改定。現在の普及率と、歩行者の命を守る信号増設への期待 #専門家のまとめ
2025.2.8(土)
歩行者や自転車が青信号で横断中、同じく青信号で交差点に進入してきた右左折車に巻き込まれる重大事故が後を絶たない。警察庁はこうした事故を防ぐべく、2025年1月31日までに「歩車分離式信号」についての指針を23年ぶりに改定。この信号サイクル導入を検討すべき条件を大幅に緩和することを決め、各都道府県の警察本部に通達した。これによって、全国的に「歩車分離式信号」の整備、導入が進む見込みだ。
そもそも「歩車分離式信号」とはどのような信号なのか、その有効性とこれまでの取り組み、現状についてまとめた。
ココがポイント
「歩車分離式は安全面で大きな有効性がある。『人』優先の交通社会を一層進展させたい」としている。
車先進国イギリスでは全ての交差点に人と車が交錯しない「歩車分離信号」を採用しています
地域住民から意見を伺ったところ、7割以上の方が導入に賛成という結果を得たことから、全国で整備を進めていくこととした
出典:警察庁
100か所の交差点で歩車分離信号の試験運用を開始。その結果「人対車」の事故が約 70 %減少するという大きな効果が現れた
エキスパートの補足・見解
「歩車分離式信号」は、歩行者が青信号のとき、車を赤信号で止める信号サイクルです。1992年、左折ダンプによる巻き込み事故で小学生のお子さんを亡くされた長谷智喜さん(命と安全を守る歩車分離信号普及全国連絡会・会長)が中心となり、長い年月をかけてその必要性が訴えられてきました。
2002年9月には警察庁で「歩車分離式信号に関する指針」が制定され、全国的に整備が進みました。全国100カ所の交差点を抽出して調査したところ、「歩車分離式信号」によって人身事故が約40%減少し、人対車両の事故は約70%減少したというデータもあります。しかし、上記『東京新聞デジタル』でも報じられているとおり、2024年3月末時点で、全国の信号機約20万6000基のうち歩車分離式は約1万基(4・98%)にとどまっています。
歩車分離式信号が導入されることで、右左折時の悲惨な巻き込み事故をどれだけ防ぐことができるでしょうか。被害者が出てから対策するのではなく、人の命や健康が奪われる前に積極的に取り組むべきです。今回の条件改定によって、弱者の命を守る歩車分離式信号の増設がさらに進むよう期待したいと思います。