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【続報】一般道で時速160kmの追突事故が「過失」ですか? 遺族衝撃 加害者は集団暴走中だった

2023.6.2(金)

Yahooニュース記事はこちら

【続報】一般道で時速160kmの追突事故が「過失」ですか? 遺族衝撃 加害者は集団暴走中だった

 5月22日、以下の記事を発信しました。

<リヤショックはちぎれ、ホイールも砕けて… 超高速の無謀追突で夫が死亡。なぜこの事故が「過失」なのか- 個人 - Yahoo!ニュース>

 今年2月、一般道を時速約160kmの超高速度で走行中の乗用車が起こした追突事故。帰宅途中に死亡した男性の妻が、「制限速度を100kmもオーバーして起こした死亡事故が、なぜ『過失運転致死罪』なのか?」と、事故車の写真を公開し、この事故を「過失運転致死」の罪で起訴した検察への疑問を訴える内容でした。

 実は、この記事が出てから8日後、裁判の進行に関して変更がありました。
 遺族が弁護士と共に宇都宮地検へ出向き、話し合って確認したところ、6月8日に予定されていた第2回公判については、7月25日、10時に予定されることになったのです。

 この事故で夫の佐々木一匡さん(63)を亡くした、妻の多恵子さん(58)は語ります。

「主人の無念さを思うと、どうしてもこのままあきらめることはできないと思い、Yahoo!ニュースの記事が出てからすぐ、危険運転事件に詳しい弁護士に相談に行きました。そうしたら、私たち遺族の思いを受け止め、即行動を起こしてくださったのです」

 

■加害者は集団暴走をしていた事実も……

 今回、遺族が宇都宮地検に求めているのは、以下の2項目です。

1、危険運転致死罪への起訴の変更

2、集団暴走行為での起訴の追加

 前回の記事ではまだ触れていませんでしたが、被告人は事故当日の夜、一緒に走っていた2人の友人がそれぞれ運転する2台のバイク(いずれも250cc)と共に、高速度での暴走行為をしており、追突の直前には、彼らのバイクを追いかけるかたちで時速約160kmもの速度を出していた可能性があるというのです。

 多恵子さんは悔しそうに訴えます。

「先日、裁判記録を見ることができ、改めて酷い事故だったことがわかりました。記録の中で被告人は、乗っていた車(トヨタ・クラウン)のことや自分の将来の心配ばかりの供述をし、とても反省しているとは思えませんでした。一緒に走っていた2人の友人の供述調書によると、事故当日は時速120km以上での走行を続けて車線変更を繰り返し、前方の車に追突しかけるということもあったようです。それなのに被告人はそうした危険な走行態度を改めようとせず、更なる加速を続け、一般道であるにもかかわらず、時速約162kmという信じられない高速度にまで加速をしました。そして、その結果、前を走る主人のバイクに追突したのです」

警察署で保管されている佐々木さんのバイク。リヤショックがちぎれ、フレームが跳ね上げられている(遺族提供)

警察署で保管されている佐々木さんのバイク。リヤショックがちぎれ、フレームが跳ね上げられている(遺族提供)

 また、被告人はこれまでにも、時速180kmを超える速度で走行する友人のバイクに同乗したり、友人のバイクに車で接触したりしたこともあるそうです。

「被告人は安全運転に対する感覚が麻痺し、事故当日のような無謀な運転行為を常習化させていたこともわかりました。いつ事故を起こしてもおかしくない運転行為を繰り返していたにもかかわらず、反省するどころか、逆にそれを自慢しているかのような供述もあり、怒りしかありません。身勝手な動機によって法を無視し、挙句の果てに引き起こされたこのような死亡事故が『不注意による過失』として裁かれることは到底納得できません」

 事故直前まで友人のバイクと共に、制限速度を大幅に超える速度で暴走していたと供述していた被告。多恵子さんを支援する弁護士は、この行為が道路交通法違反 (道路交通法68条/以下参照)にあたるとして、同罪での起訴も求めています。

 ちなみに、道路交通法 第68条(『共同危険行為等の禁止』)の条文は以下の通りです。

●道路交通法 第68条(『共同危険行為等の禁止』)

二人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者は、道路において二台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為をしてはならない。

■危険運転での起訴を求める署名活動も開始

 6月1日、佐々木さんの遺族は、宇都宮地検に宛て、起訴の変更等を求める署名活動を始めました。オンライン署名のサイトは以下です。

<一般道で時速160キロ運転は「過失」でしょうか?>

 そこには、遺族としての切実な訴えがこう綴られています。

【一般道で時速160キロ運転は「過失」でしょうか?】

 本年2月、宇都宮市内の一般道で20歳の男性が時速約162キロで車を運転し、バイクで走行中の会社員(63歳)に追突して死亡させました。この件について貴庁は加害者に対して危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪で起訴しました。

 20歳の加害者の男性は、夜9時を過ぎた暗闇の中、片側2車線または3車線の一般道を、友人2人が運転するバイク2台を追いかける形で車線変更を繰り返しながら猛スピードで走行し続けました。片側2車線の陸橋を通過する際、前方を走行していた被害者に追突し、その衝撃の強さから、被害者はその場で心肺停止となり、その後病院に運ばれ死亡が確認されました。法定速度60キロの3倍近い猛スピードで走行していたのにも関わらず、貴庁は「車を制御できていた」として「危険運転」に当たらないと判断しました。

 しかし、私たち遺族は、身勝手な動機によって法を無視し、挙句の果てに引き起こされたこのような死亡事故が「過失」すなわち不注意によるものとして裁かれるのは到底理解できません。どうか必要な補充捜査をしていただいた上で、起訴罪名を危険運転致死罪に変更するとともに、集団暴走行為(道路交通法68条)を追加してくださるようお願い申し上げます。

被害者 佐々木家 遺族一同

 多恵子さんは、今回の署名にかける思いを語ります。

「どんなに悪質な事故でも、危険運転致死傷罪ではほとんど起訴されていないのが現実です。私たち家族は、同じように苦しんでいるご遺族がいるのだと知り、署名を通して司法に危険運転致死傷罪の適切な運用を願いたく、また、全ての交通事故において適切な運用がされることを心から願い、署名活動をすることにいたしました」

 危険運転致死傷罪の条文に明記されている「進行を制御することが困難な高速度」とはどう判断されるべきなのか。
 また、一般公道で制限速度を大幅にオーバーし、レースまがいの高速度での走行をするという行為は「危険な運転」ではないのか。

 すみやかに補充捜査が行われることを期待したいと思います。

この事故で亡くなった佐々木一匡さん。本田技術研究所で長年エンジニアとして勤務していた(遺族提供)

この事故で亡くなった佐々木一匡さん。本田技術研究所で長年エンジニアとして勤務していた(遺族提供)