【1歳女児・死亡ひき逃げ】無車検車を見つけたら、勇気をもって通報を!
2022.8.7(日)
■「車検と自賠責が1年前に切れていて、まずいと思った…」
8月1日、大阪市生野区で大変痛ましい交通事故が発生しました。車両通行禁止の時間帯にもかかわらず、乗用車が道幅の狭い商店街に進入。名古屋市から両親やきょうだいと共に観光に来ていた1歳の女の子がはねられ、亡くなったというのです。
■1歳女児ひき逃げ死亡、74歳男を容疑で逮捕 車検切れ「まずいと」:朝日新聞デジタル (asahi.com)
上記記事によれば、容疑者は事故直後いったん車から降りたものの、「車を止めてくる」と言ってそのまま逃走。間もなく逮捕されましたが、
「車検と自賠責保険が約1年前に切れていて、まずいと思った」
そう供述しているそうです。
実は、この事故が起こる直前、私は、無車検、自賠責未加入車を減らすための自主防犯活動をされているAさんという方から連絡をいただき、取材中でした。
無車検車によって起こされた今回の死亡事故のニュースを目にしたAさんは、悔しそうにこう語りました。
「もちろんこの事故は、加害者が車両通行禁止を破ったことが原因ですが、この車が無車検だということに誰かが気づき、事故を起こす前に検挙されていれば、女の子は亡くならずに済んだかもしれない……、そう思うとやり切れません」
商店街では多くの場所で自動車の乗り入れが禁止され、歩行者専用になっているのだが…(筆者撮影)
■無車検車を通報する「自主防犯活動」
Aさんは数年前、知人が車検切れの車に悪びれる様子もなく乗り続けていることを知り、とてもショックを受けたそうです。それとなく注意をしても、まったく改める様子がなかったため、心を鬼にして警察に通報。結果的にその知人は、道路運送車両法違反(車検切れ)、自動車損害賠償保障法違反(自賠責切れ)の罪で略式起訴され、処分を受けました。
Aさんは語ります。
「この出来事をきっかけに、無車検車がよく目につくようになりました。車検の期限はフロントガラスのステッカーを見ればすぐにわかります。コンビニや遊興施設の駐車場などでちょっと注意しながら見ていくと、結構いるんですよね。そこで、車検切れの車を見つけてはナンバーや車種などをメモし、直接本人に注意しています。また、走り去った場合は追跡し、その事実を110番通報するようにしています」
車検の有効期限を示すステッカー(国土交通省のサイトより)
ちなみに、車検が切れていてもその車を動かさなければ罰則はありませんが、車検が切れたまま公道を走った場合は、法律で以下の罰則が定められています。
・刑事処分/6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・行政処分/違反点数6点(一発で30日間の免許停止処分)
また、車検だけでなく、自賠責保険も切れている場合は、最大で1年6カ月以下の懲役または80万円以下の罰金に処される可能性があります(違反点数は6点)。
ご存じの通り、車やバイク(251cc以上)の車検を受けるには、次の期限までの自賠責証明書が必要です。つまり、車検切れということは、ほぼ自賠責の有効期限も切れている、ということになります。
車検は公道を走る車や251cc以上のバイクに義務付けられている(写真:イメージマート)
「車検」とは、その車が一般公道を安全に走ることができるかどうかを検査する制度です。
たとえば、タイヤがすり減っていたら不合格ですし、ブレーキ性能はもちろん、ヘッドライトの光軸なども細かなチェックがなされます。つまり、車検の切れた車は「安全」とは言えない「危険な車」の可能性があるのです。
そんな車に自賠責もかけず、長期間にわたって公道を運転し続ける……。ドライバーとしては大変悪質な行為です。そして、こうした順法精神のなさは、第二、第三の不法行為につながりがちです。
冒頭で取り上げた事故の容疑者は、「車両通行禁止」の標識が出ていたにもかかわらず、それを無視して事故を起こし、被害者の救護どころか、けが人の有無の確認すらせず逃走したようです。
私が過去に取材した中にも、無車検、自賠責未加入車による死亡事故がありました。加害者は、飲酒運転で車に当て逃げをし、無灯火で一方通行の道を逆走して逃走。その途中で、横断歩道を自転車で渡っていた大学生に衝突し、死亡させたのです(以下の記事参照)。
<息子死なせた加害者、全財産は7000円 謝罪も賠償もないまま母国へ>
Aさんも、無車検車を運転するドライバーについては同様の印象を持っていると言います。
「無車検車を運転する人の中には、もちろん『うっかり期限を忘れていた』という人もいますが、車検が切れていることを知っていて、それでも乗り続けている人の場合、運転の粗い荒いドライバーが少なくないように感じています。また実際に、無車検を指摘されたことで暴力行為に及んだ者もいました。その人物は、道路運送車両法違反、自動車損害賠償保障法違反のほかに、傷害の罪でも起訴され、懲役2年執行猶予4年、保護観察付きの判決になりましたが……。ただ、こうした通報を受けての警察の対応にも、かなりばらつきがありますね。真剣に動いてくれる場合と、そうでない場合があります。でも、悲惨な事故につながる無車検車が1台でも減るように、引き続きこの活動を続けていきたいと思います」
■無車検車を見つけたら、国交省の通報窓口へ
無車検車や無保険車については、警察に通報する方法以外に、国土交通省でも『無車検車・無保険(共済)車通報窓口システム』を設けています(以下で紹介)。
無車検車は、今も私たちのすぐ近くで走っている可能性があります。期限切れのステッカーを発見した場合、もしくはステッカーの貼られていない車を発見した場合は、国交省の通報フォームに「通報者名、確認年月日、確認場所、プレートナンバー、有効期限及び通報者連絡先」を送ってください。
国土交通省のサイトより
■「危険運転致死罪」で送検された加害者
冒頭の事故の容疑者は、事故当日、「自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)」と「道路交通法違反(ひき逃げ、通行禁止違反)」の疑いで逮捕されましたが、2日後の8月3日、「危険運転致死罪」で送検されました。
大阪・生野区女児死亡ひき逃げ事件 逮捕された男「車を止めてくる」と言って現場から逃走(読売テレビ) - Yahoo!ニュース
安全性が認められていない無車検車で、歩行者専用の道を走り、なんの落ち度もない1歳の女の子の大切な命が奪われました。ご遺族の立場に立てば当然の罪名だと思いますが、果たして検察は「危険運転致死罪」で起訴するのか……。
今後、刑事裁判の経緯にも注目していきたいと思います。
車検の期限を示すステッカー(写真:イメージマート)
<参考/国土交通省のサイトより>
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk5_000012.html
国土交通省では、様々な無車検車・無保険(共済)車(以下「無保険等車」という。)対策を行っているところですが、依然として車検を受けず、又は自賠責保険(共済)に加入せずに自動車等を運行している者が見られることから、無車検車・無保険等車対策の一環として無車検車・無保険等車通報窓口を設置いたしました。
一般の皆様からの通報をお待ちしております。
なお、お寄せ頂いた情報は、国土交通省において受検の有無又は保険(共済)の付保確認等を行い必要な措置を講じさせて頂きます。
●通報フォーム
通報フォームをダウンロードして頂き、必要事項をご記入の上、電子メール又はFAXにより情報を提供してください。
※通報フォームをダウンロード出来ない場合は、通報者名、確認年月日、確認場所、プレートナンバー、有効期限及び通報者連絡先をご連絡下さい。
【無車検車の通報】
・電子メールの場合:ご記入後の通報フォームを添付の上、下記アドレスに送信してください。
Email:hqt-g_tpb_seb3@gxb.mlit.go.jp
・FAXの場合:ご記入後の通報フォームをプリントアウトした上で、03-5253-1639に送信してください。
【無保険等車の通報】
・電子メールの場合:ご記入後の通報フォームを添付の上、下記アドレスに送信してください。
Email:hqt-muhoken-tsuho_01@gxb.mlit.go.jp
・FAXの場合:ご記入後の通報フォームをプリントアウトした上で、03-5253-1638に送信してください。
●注意事項
・頂いた情報は、無車検・無保険等車対策以外には利用いたしません。
・ご記入頂いた内容について個別の回答はいたしかねますので、予めご了承ください。
・無車検・無保険等車に関係のない情報提供はご遠慮願います。
・ご記入頂いた内容の確認のためにご連絡させて頂く場合がございます。