クルマが雪に埋まった!「外気導入」のスイッチ操作と除雪ひとつが生死を分ける
2021.1.5(火)
昨年12月16日に新潟県などで大雪が降り、関越自動車道で多数の車が立ち往生した問題。
動けなくなった車は上下線で最大約2100台にのぼり、完全に解消されるまでに2日以上(52時間)かかったそうです。
大渋滞で全く前へ進めない中、車がすっぽりと雪に覆われていくさまをニュースの映像で見ながら、
『もし、自分が巻き込まれたら……』
『車内に排気ガスが入ってきて、一酸化炭素中毒になったらどうしよう』
と、恐怖を感じた方も多いことでしょう。
一酸化炭素中毒というのは自覚することが難しく、気づかぬうちに命に関わる大事に至ることが多いそうです。
かといって、エンジンを止めてしまうとエアコンが利かないため、寒さで凍えてしまいます。
今週末には年末年始を上回る寒気が南下し、さらなる大雪の恐れがあるとか。 『週後半に寒気南下で大雪のおそれ 年末年始を凌ぐ寒さか(ウェザーマップ) - Yahoo!ニュース』
そんな中、とても基本的ですが大切な情報が寄せられましたので、皆さんにもぜひご紹介しておきたいと思います。
■雪で車が立ち往生したら、エアコンは必ず「外気導入」モードに!
「もし、雪の中で車が立ち往生し、車内でエアコンをかけたまま過ごすことになったら、エアコンの設定は絶対に『内気循環』にしてはいけません。必ず『外気導入』にしてください」
そう指摘するのは、都築純さん(63)です。
都築さんは長年、アメリカで大臣やハリウッドセレブらの身辺警護兼ドライバーとして勤務してきたリスク管理のエキスパートです。また、2輪から18輪の大型トレーラーまであらゆる車種の運転経験を持つ、運転のプロでもあります。
そんな都築さんですが、ご自身が北海道の札幌市出身ということもあり、雪の怖さは痛感していると言います。
車のエアコンの 『内気循環』とは、外気の流入を制限して車内の空気を循環させるモードのことで、スイッチには以下のマークがついています。車を運転している人なら誰でも見たことがあるはずですが、駐車時に自動で外気導入になる車種もあるので、「普段、あまり気にしたことがない」という人も多いのではないでしょうか。
ではなぜ、大雪の中で車が立ち往生したり、雪に埋もれてしまったりしたとき、「内気循環」がダメで、「外気導入」にすべきなのでしょうか?
都築さんはこう語ります。
「万一、雪でマフラーの排気口が塞がれてしまうと、マフラーの出口が塞がれることによって、排気ガスは車体下部(床下)とエンジンルームへ回り、車体の隙間から侵入してきます。この危険についてはよく知られていると思いますが、この状態でエアコンを『内気循環』にしている自動車は、短時間で車内の一酸化炭素濃度が上昇し、命が危険な状態になってしまうのです」
■外気導入にしたら「フロントワイパー下部」の除雪も忘れずに
この危険を回避するために必要なのが、エアコンを「外気導入」のモードに設定することです。
「外気導入は多くの場合、フロントガラスの下部にある外気導入口(ワイパーの下あたり)から外気を吸い込んでいます。ですから、この部分を塞いでしまわないように気をつけて除雪をしておきさえすれば、車内の一酸化炭素濃度の上昇は確実に抑えることができるのです」
都築さんがぜひ目を通しておいた方がよいという実験結果が、『国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所』のサイトに掲載されています。
軽自動車と小型自動車の2タイプを対象に行われたのは、
1) マフラーが雪で塞がれた状態
2) フロントグリルが雪で塞がれた状態
3) フロントワイパー下部まで雪で塞がれた状態
という状況でエアコンをかけた実験で、それぞれに、内気循環、外気導入における車内の「一酸化炭素」「二酸化炭素」「酸素」の濃度が計測されています。
都築さんはその結果を見て驚いたと言います。
「実験結果では、マフラーの排気口が塞がれた状態でも、エアコンを『外気導入』に設定しておけば、車内の一酸化炭素・二酸化炭素濃度はほとんど変わりませんでした。フロントワイパー下部から外気を取り込むためです。ところが、『内気循環』にしていると、小型自動車の場合はわずか30分ほどで二酸化炭素濃度が2000ppmに、50分で3000ppmまで上がってしまったのです」
しかし、ボンネットに雪が積もり、フロントワイパー下部の外気口が雪で塞がれてしまうと、エアコンを『外気導入』にしていても20分を超えた頃から一酸化炭素濃度が、200ppm⇒600ppmと急上昇していきます。
外気の導入口が塞がれると、車内にはエンジンルームと車体下部から流入してくる排気ガスが充満されてしまうのでしょう。
フロントワイパーの下部にある格子のような部品、車種によって異なるが、多くの場合この場所から外気を導入している(都築さん提供)
この実験結果をまとめた『雪に埋没した乗用車内における一酸化炭素中毒事故防止について』という論文には、総合的な評価が以下のようにまとめられています。
一部抜粋します。
<車両が雪に埋もれた場合、排気ガスによるCO中毒等を防止するためにはエンジンを稼働させないことが最善であるが、寒さ対策等でエンジンを稼働させる場合には必ず排気管出口を大気へ開放し、追加の降雪や吹き溜まりにより塞がらないよう注意する必要がある。また、フロントワイパー下部開口の閉塞にも注意し、新鮮な外気を取り込めるようにしておくことも重要と考えられる。しかし、これらの対策をすれば絶対に安全というわけではない。>
都築さんは言います。
「繰り返しになりますが、とにかく、吹雪や通行止めなどで立ち往生に巻き込まれた場合、エアコンは外気導入にすることを忘れないでください。ここで見落とさないでほしいのは、外気の吸い込み口であるフロントワイパーの下部です。ここにあるプラスチックの部分が雪で塞がれた状態にならないよう、時々雪を払うことが必要です。この行為が、一酸化炭素中毒を防ぎます。もちろん、冬道では適正なタイヤやチェーン、非常食、飲料水、毛布、懐中電灯、スマホ充電コードなど、非常時の備えも必須ですね」
大寒波、大雪の予報が出ているときは、車の運転は控えるべきですが、それでも万一、こうした事態に巻き込まれた場合は、「外気導入&フロントワイパー下部の除雪」というキーワードを、ぜひ思い出していただければと思います。
<参考サイト>