「ちょっとくらいなら」は許されない、自転車の「ながらスマホ」「酒気帯び」に厳罰、クルマ運転時と同等の緊張感を
信号無視や一時不停止、歩行者妨害にも「反則金」が……導入はいつから?
2024.11.5(火)
また「あの交差点」で自転車が信号無視
まずは、こちらの動画をご覧ください。東京・池袋駅近くの横断歩道で、2024年10月22日に撮影されたものです。
池袋駅近くの交差点の様子。赤信号でも平気で通行しようとする自転車は、青信号の横断歩道を渡る歩行者を避けながら直進していった(今年10月22日撮影)
自転車側の信号は赤、横断歩道の歩行者用信号は青、にもかかわらず、自転車は横断歩道の手前で停止しようとせず、速度を落とすそぶりも見せずにそのまま進んでいきます。
と、そのとき、左側から横断歩道を渡ろうとする歩行者が現れます。自転車はとっさに右側へハンドルを切り、歩行者との衝突は免れましたが、タイミングが少しずれていれば衝突していたかもしれません。
実はこの動画、まさにこの横断歩道で自転車にひき逃げされた被害者のAさんから送られてきたものです。よく見ると、横断歩道のわきに目撃情報を募る警察の看板が立てられているのがわかります。
2年前の池袋ひき逃げ事故の現場に立つ目撃情報提供を呼び掛ける看板
Aさんがこの場所でひき逃げ事故に遭ったのは2年前、2022年10月18日午後3時半頃のことでした。衝突の瞬間をとらえた防犯カメラの映像は、これまで多くのメディアで繰り返し公開されてきましたが、犯人は2年以上経過した今もまだ捕まっていないので、本記事でもアップさせていただきます。
2022年10月、池袋で起きた自転車によるひき逃げ事故発生時の動画。犯人はまだ捕まっていない
この事故で全身打撲の傷害を負ったAさんは語ります。
「ここは私の通勤路なので毎日のように通っているのですが、信号無視をする自転車が後を絶ちません。何気なく観察していると、わずか数分の間に何台もの自転車が信号無視をし、何食わぬ顔で目の前を通り過ぎて行くのです。横断歩道での信号無視がいかに危険な行為か、自転車に乗る方々にはしっかり認識していただきたいと思います」
実は、Aさんは数年前、大切な家族を交通事故で亡くされています。筆者はその事故をきっかけにAさんと知り合ったのですが、今度はAさん自身がこのようなひき逃げ被害に遭われることになり、交通事故は決して他人ごとではないことを痛感しています。
罰則導入されても減らなかった「ながらスマホ」の自転車事故
さて、2024年11月1日から、自転車に関する改正道路交通法が一部施行となりました。いま、このニュースがさまざまなメディアで一斉に報じられていますが、ここでもポイントだけ押さえておきたいと思います。
まず、スマートフォン等を手に持ちながら自転車を運転する「ながら運転」の罰則が強化されました。これまでは「5万円以下の罰金」でしたが、今回の改正によって「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」へと引き上げられています。万一、「ながら運転」が原因で事故を起こした場合は、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。
実際に、自転車の「ながら運転」による死亡・重傷事故は増加傾向にあり、警察庁の統計によると、2024年の1~6月は前年の2倍超になっています。スマホを手に持ち、画面を注視しながらの運転は大変危険なのでやめましょう。
もうひとつ、今回の改正では「酒気帯び運転」(*呼気1リットル中にアルコールが0.15mg以上)についての罰則が新設され、自転車の運転者も車やバイクと同じく、最高懲役3年、罰金50万円以下に処されることとなりました。
警察庁広報チラシ(11月1日)
初日である11月1日には早速、全国各地で酒気帯び自転車が検挙されたようで、それを伝える以下のような報道が相次いでいます。
(外部リンク)自転車酒気帯び3人摘発、うち1人逮捕 改正道路交通法施行初日で栃木県警(とちぎテレビ)
「酒気帯び運転」の危険性は言うまでもありませんが、実際に、死亡・重傷事故率は、飲酒をしていない場合と比べて1.9倍高くなっているというデータがあります。自転車ならお酒を飲んでも大丈夫、という甘い考えは捨て、飲酒をした場合は絶対にハンドルを握らないよう気をつけてください。
2026年度中に自転車にも「青切符」制度
では、冒頭で取り上げた自転車による信号無視などの危険な違反は、今回の道交法改正でどのように扱われるのでしょうか。
これについては、少し先になりますが、2026年中に「青切符」制度が導入される予定です。つまり、車やバイクと同じく、自転車の違反者に対しても青切符を切り、反則金を求めるということです。
すでに2024年3月には、「青切符」制度の導入が閣議決定しています。種類としては、信号無視、一時不停止、歩行者妨害、傘差し運転、右側通行、並行運転など100を超える違反が挙げられており、反則金は下記のように、5000円から1万2000円程度となる見込みです。
・指定場所一時不停止…5000円
・信号無視…6000円
・通行区分違反(右側通行・歩道通行など)…6000円
・遮断踏切立ち入り…7000円
・携帯電話の使用等(保持)…1万2000円
青切符の対象は16歳以上となっていますが、小中学生でも、悪質な運転をした場合は児童相談所への通告などが行われる可能性があるので、この機会に親子で自転車のルールについてしっかり確認し、学ぶ機会を持つことが大切です。
自転車も立派な「車両」、自転車保険にも加入すべき
つい最近も、痛ましい事故が発生しました。2024年10月30日、山梨県甲府市で高校生の自転車と歩行者の男性(83)が衝突。2日後の11月1日、重体となっていた高齢男性が死亡したというのです。
(外部リンク)重体だった83歳の男性が死亡 高校生運転の自転車と衝突 現場は自転車が通行可能な歩道 (UTYテレビ山梨)
本件のように、自転車であっても死亡事故の当事者になることがあります。交通法規を守り、十分に気をつけることはもちろん、万が一のために、自転車に乗る際には必ず自転車保険(賠償責任保険)をかけておくことが大切です。
警察庁が公開している警鐘ポスターには、こんなメッセージが記されています。
『自転車の赤信号無視は悪質・危険な違反です。もし信号無視をしている方、今すぐやめてください! 軽い気持ちで違反をしても、事故の際の責任は重大です』
警察庁のポスター
自転車はれっきとした「車両」です。反則金の導入はまだ少し先になりますが、事故の加害者にならないよう、信号や標識はもちろん、ルールをしっかり守るよう心がけてください。
また、万が一、事故を起こしてしまった場合は、必ず被害者を救護し警察に届けなければなりません。自転車であっても、ひき逃げ(救護義務違反)をすると重い罪に問われることを忘れないでください。