ジャーナリスト・ノンフィクション作家 柳原三佳オフィシャルサイトHP

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伝染病対策の原点、明治初期の「コレラ感染届出書」

『開成をつくった男、佐野鼎』を辿る旅(第38回)

2020.5.25(月)柳原 三佳 日本でコレラが大流行した明治10年は西南戦争が勃発した年。戦線でコレラが発生し、帰還兵によって全国に流行が広がったと言われる。絵は田原坂の戦い(Wikipediaより)
日本でコレラが大流行した明治10年は西南戦争が勃発した年。戦線でコレラが発生し、帰還兵によって全国に流行が広がったと言われる。絵は田原坂の戦い(Wikipediaより)

 「緊急事態宣言は、いったい、いつ解除されるのか・・・」

 その動向を多くの国民が不安な面持ちで待つ中、政府は5月21日午後、緊急事態宣言が発出されている8都道府県のうち、京都、大阪、兵庫の3府県で解除する方針を決定しました。

 そして本日(5月25日)、政府は残る東京、神奈川、埼玉、千葉と北海道の5都道県も解除の方向で最終調整しているとのことです。

 解除の目安は、直近の1週間で「10万人当たりの新規感染者が0.5人以下」という数字を満たしていること。この数字を算出するためにまず必要なのは、いうまでもなく「感染者数の正確な把握」です。

 日本の場合、「感染症法」という法律に基づいて、感染症患者の診断を行ったすべての医師に対し、都道府県知事(最寄りの保健所)への届け出が義務付けられています。

 厚生労働省のサイトには、その目的がこう記されています。 <感染症法に基づいて、対象の感染症を診断した際に届出をいただくことで、感染症の発生や流行を探知することができ、まん延を防ぐための対策や、医療従事者・国民の皆様への情報提供に役立てられます>

 現在、問題となっている新型コロナウイルスに関しては、『新型コロナウイルス感染症発生届』という専用の書式が用意されており、診断を行った医師の住所氏名、患者の住所氏名と生年月日、症状、感染経路、診断方法、感染推定日などを細かく記入したうえで、直ちに届け出を行うことになっています。

【JBPress(連載記事)はこちら】
(第38回)伝染病対策の原点、明治初期の「コレラ感染届出書」

佐野鼎

【連載】

(第1回)昔は男女共学だった開成高校、知られざる設立物語

(第2回)NHK『いだてん』も妄信、勝海舟の「咸臨丸神話」

(第3回)子孫が米国で痛感、幕末「遣米使節団」の偉業

(第4回)今年も東大合格者数首位の開成、創始者もすごかった

(第5回)米国で博物館初体験、遣米使節が驚いた「人の干物」

(第6回)孝明天皇は6度も改元、幕末動乱期の「元号」事情

(第7回)日米友好の象徴「ワシントンの桜」、もう一つの物語

(第8回)佐野鼎も嫌気がさした? 長州閥の利益誘導体質

(第9回)日本初の「株式会社」、誰がつくった?

(第10回)幕末のサムライ、ハワイで初めて「馬車」を見る

(第11回)これが幕末のサムライが使ったパスポート第一号だ!

(第12回)幕末の「ハワイレポート」、検証したら完璧だった

(第13回)NHKが「誤解与えた」咸臨丸神話、その後の顛末

(第14回)151年前の冤罪事件、小栗上野介・終焉の地訪問記

(第15回)加賀藩の採用候補に挙がっていた佐野鼎と大村益次郎

(第16回)幕末の武士が灼熱のパナマで知った氷入り葡萄酒の味

(第17回)遣米使節団に随行、俳人・加藤素毛が現地で詠んだ句

(第18回)江戸時代のパワハラ、下級従者が残した上司批判文

(第19回)「勝海舟記念館」開館! 日記に残る佐野と勝の接点

(第20回)米国女性から苦情!? 咸臨丸が用意した即席野外風呂

(第21回)江戸時代の算学は過酷な自然災害との格闘で発達した

(第22回)「小判流出を止めよ」、幕府が遣米使節に下した密命

(第23回)幕末、武士はいかにして英語をマスターしたのか?

(第24回)幕末に水洗トイレ初体験!驚き綴ったサムライの日記

(第25回)天狗党に武士の情けをかけた佐野鼎とひとつの「謎」

(第26回)幕末、アメリカの障害者教育に心打たれた日本人

(第27回)日本人の大航海、160年前の咸臨丸から始まった

(第28回)幕末、遣米使節が視察した東大設立の原点

(第29回)明治初期、中国経由の伝染病が起こしたパンデミック

(第30回)幕末の侍が経験した「病と隣り合わせ」の決死の船旅

(第31回)幕末、感染症に「隔離」政策で挑んだ医師・関寛斎

(第32回)「黄熱病」の死体を運び続けたアメリカの大富豪

(第33回)幕末の日本も経験した「大地震後のパンデミック」

(第34回)コロナ対策に尽力「理化学研究所」と佐野鼎の接点

(第35回)セントラル・パークの「野戦病院化」を予測した武士

(第36回)愛息に種痘を試し、感染症から藩民救った幕末の医師

(第37回)感染症が猛威振るったハワイで患者に人生捧げた神父

(第38回)伝染病対策の原点、明治初期の「コレラ感染届出書」