珍しくない「物損事故で億単位の賠償」、任意保険未加入ならば悲劇の二重奏に
自賠責は最低限の「対人保険」、任意保険も補償額や年齢条件の再確認を
2022.4.19(火)
4月17日未明、京都の亀岡市の中心街で乗用車が猛スピードで3階建ての建物に突っ込み、1階の貴金属店と2階の美容室、そして車が全焼したという事故発生のニュースが流れました。
(外部リンク)MBS NEWS「車が店に突っ込み炎上…運転していた専門学校生を逮捕 交差点で赤信号を無視し逃走か」(https://www.mbs.jp/news/kansainews/20220418/GE00043431.shtml)
事故現場の映像を見て、その被害の大きさに驚きました。
店舗のシャッターに突き刺さるように突っ込んだ車は原形をとどめないほど丸焦げになり、1階と2階の店舗も焼け落ちた状態です。
夜中ということもあって幸い店内に人はおらず、また歩行者が巻き込まれるということもありませんでした。それだけは不幸中の幸いだったと言えるでしょう。
しかし、もしこの事故の発生が日中だったら……、それを想像すると、思わず背筋が寒くなります。
事故で店舗に突っ込んでしまったら
報道によると、この車を運転していたのは18歳の専門学校生。直前に赤信号無視をし、パトカーに追跡されていたそうです。助手席には19歳の男性が乗っており、胸を打って重傷。運転者は軽傷でした。
ネットのコメント欄には、
『これはものすごい賠償額になりそう……』
『加害少年はちゃんと任意保険をかけていたんだろうか?』
といった書き込みが相次ぎました。
今回事故を起こした少年が、誰の車に乗っていたのか、またその車にきちんと任意保険がかかっていたのかについては不明ですが、被害を受けたビル、店舗の備品や商品はもちろん、休業損害等はおそらく莫大なものとなるでしょう。乗用車が起こした事故としては、超高額の「対物賠償事例」になることは間違いありません。
物損事故は自賠責の補償範囲外
当然のことですが、交通事故によって他人の車や建物などの「財物」に損害を与えた場合、事故を起こした運転者は法律上の損害賠償責任を負うことになります。
車の購入時や車検時には自賠責保険の加入が義務付けられていますが、この保険はあくまでも、最低限の「対人保険」です(保険金額の上限は、死亡事故の場合3000万円、重度障害の場合4000万円)。「モノ」の損害に対しては、自賠責からは1円も支払われませんので、物損事故に対しては、任意の自動車保険で「対物保険」を契約しておく必要があります。
「物損事故」といっても、決して甘く見てはいけません。過去には「億」を超えるケースも多数発生しているのです。
日本損害保険協会のサイトには、対物事故の高額損害額として、以下のような判例が紹介されています。
●2億6135万円/積荷(呉服・洋服・毛皮)の損害<1994年7月19日>
●1億3450万円/店舗(パチンコ店)<1996年7月17日>
●1億2036万円/電車・線路・家屋<1980年7月18日>
このような事故が起こった場合、よほどの資産家でもない限り、個人での賠償は不可能でしょう。
実は、ひと昔前まで、乗用車の対物保険は保険金額に上限が設けられていましたが、現在は対物保険でも「無制限」という設定が可能になっています。任意保険をかける場合は、万一に備え、対人はもちろん、対物も無制限で契約しておくことをお勧めします。
未成年は任意保険の年齢条件に要注意
未成年の運転者が車を運転する場合、もうひとつ気をつけなければいけないのは、任意保険の「年齢条件」です。
若年層は事故を起こす確率が極めて高いため、条件は厳しく、保険料も大変割高に設定されています。
親の車に十分な補償内容の任意保険がかけてあっても、年齢条件が合っていなければ万一のとき保険金は支払われません。
初心者のうちは、親の車や知人の車を借りて運転することもあるかと思いますが、その場合、「全年齢担保」(*何歳の人が運転してもOK)という条件に変更する、また、親子で乗る場合は「子供追加特約」をつける方法もありますので、保険会社や代理店に相談してください。
また、未成年者が自分の車を購入するときは、任意保険料のあまりの高さに驚いて、保険をかけずに乗ってしまうケースも散見されます。そのようなことがないよう、家族は任意保険についてもしっかりチェックしてください。
筆者はこれまで多数の交通事故を取材してきましたが、任意保険未加入の加害者が自己破産して逃げてしまい、被害者が泣き寝入りを強いられたケースは数えきれません。
また、わが子が無保険で起こした事故で、多額の賠償金を請求され、加害者の親が自宅を売却せざるを得なかったケースも実際にありました。
今回のような大事故が実際に発生しているということを認識し、いま一度、任意保険の補償内容や保険金額を十分に確認しておく必要があるでしょう。