ジャーナリスト・ノンフィクション作家 柳原三佳オフィシャルサイトHP

ジャーナリスト・ノンフィクション作家 柳原三佳オフィシャルHP

災害時、電動自動車は「非常用電源」になる。猛烈台風到来前に必見の国交省マニュアル

2024.8.15(木)

Yahooニュースはこちら

災害時、電動自動車は「非常用電源」になる。猛烈台風到来前に必見の国交省マニュアル

 大型の台風7号が関東地方に迫っています。

 今回の台風は、5年前(2019年)の9月9日、千葉県に上陸した台風15号のルートと規模が似ているとのこと。あのとき、甚大な被害を目の当たりにした千葉県民のひとりとして、暴風雨はもちろん、その後に大きな不安を感じています。

2019年の台風15号で折れた電柱(筆者撮影)

2019年の台風15号で折れた電柱(筆者撮影)

 2019年に千葉市で記録した最大瞬間風速は、観測史上1位の57.5メートル。送電線の巨大な鉄塔やゴルフ練習場のネットを支える鉄柱が倒壊し、近隣住宅の屋根を押しつぶしたあの映像を記憶している方も多いことでしょう。

 被害はそれだけにとどまりませんでした。台風15号の暴風雨によって、死者3名、重軽傷者150名を出し、住宅は391棟宅が全壊、7万6483棟が半壊もしくは一部損壊したのです。

 また、広域にわたって多くの電柱が折れ、配電設備が致命的な被害を受けたことから、関東エリアでは約93万4,900戸の大規模停電に見舞われました。多くの世帯で断水も発生し、ライフラインが断たれたのです。

 特に深刻だったのは、一部エリアで停電の復旧に長期間を要したことです。長いところでは、20日以上も停電が続きました。

 私の自宅は幸い50時間余りで復旧したのですが、それでも、猛暑の中での停電は本当に厳しいものがありました。

特に房総半島の南部では多くの家屋は屋根を飛ばされ、停電被害も復旧に時間がかかった(筆者撮影)

特に房総半島の南部では多くの家屋は屋根を飛ばされ、停電被害も復旧に時間がかかった(筆者撮影)

■非常用電源としての「電動車」に注目

 さて、そんな中で被災者の救世主となったのが、非常用電源としての「電動車」の活躍でした。

「電動車」とは、電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車のことをさします。

 実際に私も、5年前の台風15号のとき、複数の避難所で電動車が外部給電機能を活用し、ドライヤーや扇風機などの生活家電に給電している状況を取材しました(下記の記事参照)。

<10日ぶりのドライヤーに歓声! 停電続く被災地に『電動車』が無償提供(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース>

 このとき、メーカーの方から、「プリウスPHVは、満充電、満ガソリンの場合、一般家庭の4日分の電気を賄うことができます」と聞いて驚きました。

千葉県山武市の避難所に運ばれてきた電動車から電気を供給し、10日ぶりにドライヤーを使えたという被災者たち(筆者撮影)

千葉県山武市の避難所に運ばれてきた電動車から電気を供給し、10日ぶりにドライヤーを使えたという被災者たち(筆者撮影)

■電動車ユーザーは国交省のサイトをチェック

 国土交通省は、同サイト内で以下のように呼びかけています。

『災害時に電動車は移動式の非常用電源として使えます』

多くの電動車は、外部給電機能を備えており、災害時に移動式の非常用電源として活用できます。しかしながら、非常時に電動車から給電できることを認識されていない方もいらっしゃるため、改めて紹介いたします。詳しくは新たに開設した以下のホームページをご覧ください。

https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn7_000008.html

 外部給電機能や100V用電源コンセントを備えた電動車については、日本自動車工業会のサイトに一覧表が掲載されていますので、マイカーが電動車の方は、ぜひ、事前にチェックしておくことをおすすめします。

https://www.jama.or.jp/operation/maintenance/power_supply/reference.html

 とはいえ、せっかく電動車を持っていても、災害時にそれを使えなければ意味がありません。

 まずは、冠水や水没からマイカーを死守すること。浸水の恐れがある場合は、早めに車を高い場所へ避難させておきましょう。

 それでも、もし、電動車が水に浸かってしまった場合は、感電したり、火災をひきおこすおそれがありますので、不用意に触らないようにしてください。

 また、立体駐車場などに車を置いている場合は、停電すると車自体を出すことができない場合があります。こうした事態も想定して、あからじめ対策を練っておくことが大切です。

 とにかく、大きな被害が出ないことを祈るばかりです。